羽織のたたみ方を完全攻略!着物との違いとシワ防止の決定版
和装のコートとして秋冬の外出に欠かせない「羽織」。着物愛好家から式典で着用する男性、普段着物やアンティークを楽しむファンまで幅広い層に愛用されていますが、脱いだあとの整理で「着物と同じようにたたんでいいのか」「折り目が合わずシワになってしまう」と頭を抱えるケースが後を絶ちません。
羽織には、着物とは明確に異なる仕立て上の構造(マチ・衿の折り返し・羽織紐)が存在します。この構造上の違いを無視して着物と同じ感覚でたたむと、衿元に不要な折りジワがついたり、胸元の見栄えを損ねたりする原因になります。今回は和裁士や悉皆屋(しっかいや)の現場知見をもとに、初心者でも失敗しない基本手順から羽織紐の処理、長期保管の防虫対策まで徹底解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:羽織は「衿を外側に半分に折る」「マチを内側に倒す」という着物と逆の工程がシワを防ぐ最大の肝。
- 要点2:外出先での一時保管には「袖だたみ」、タンスやたとう紙への収納には「本だたみ」を使い分けるのが鉄則。
- 要点3:羽織紐の結び跡や絵羽模様の折り目の位置を把握し、湿気・防虫対策を行うことで生地寿命が大幅に延びる。
【基本手順】プロが教える羽織のシワにならないたたみ方(本だたみ)
自宅でたとう紙に収める際に行う正式な方法が「本だたみ」です。床や衣装敷きの上に平らに広げ、余計なテンションをかけずに平面的に整えることで、型崩れや不要なシワを防ぐことができます。
具体的な手順は以下の6ステップです。
ステップ1:衿を外側に半分に折る
羽織を自分から見て衿(胸元)を手前に向け、平らに広げます。着物は衿を内側に折り込みますが、羽織は衿(衿肩あきから衿先まで)を外側へ半分に折るのが最大のポイントです。
ステップ2:脇のマチ(衽・脇線)を内側に倒す
羽織の両脇にある「マチ」を、身頃の内側へきれいに倒し込みます。左右両方のマチを平らにならし、脇の縫い目がまっすぐになるよう整えます。
ステップ3:下前(右身頃)を身頃の中心線で折る
着用時の右側にあたる下前を持ち上げ、背中心に沿わせるように身頃の中心へ折り返します。このとき、右袖は外側へ自然に出しておきます。
ステップ4:上前(左身頃)を下前の上に重ねる
着用時の左側にあたる上前を、下前の上にぴったりと重なるように被せます。左右の衿先と裾が寸分の狂いもなく重なっているかを確認し、手のひらで軽く撫でて空気を抜きます。
ステップ5:左右の袖を身頃の上に折り返す
まず上側にある左袖を、袖付けの縫い目に沿って身頃の上へ折り返します。次に羽織全体を裏返すか、下側の右袖を身頃の下へくぐらせる形で背中側に折り返します(※身頃の上に両袖を重ねる流派もありますが、厚みを分散させるためには前後に1枚ずつ折り振るのが一般的です)。
ステップ6:丈に合わせて裾を折り上げる
たとう紙のサイズに合わせて、身頃の丈を2つ折り(長羽織の場合は3つ折り)にして完成です。

着物と羽織のたたみ方の違い|構造から見る決定的な3つのポイント
着物と羽織は一見似ていますが、仕立ての構造が異なります。この違いを理解しておくと、迷わずに正しい折り目をつけられます。
| 比較項目 | 羽織(本だたみ) | 長着・着物(本だたみ) | 失敗を防ぐチェックポイント |
|---|---|---|---|
| 衿の折り方 | 衿を外側に半分に折る | 衿を内側に折り込む | 羽織の内側衿を折ると着用時に不自然な折り目が出る |
| 脇の構造(マチ) | 脇に「マチ」があり内側に倒す | 衽(おくみ)を前身頃へ倒す | マチの幅を無理に引っ張らず自然な縫い目で折る |
| 胸元の付属品 | 羽織紐(結んだままor取り外し) | なし(帯留や帯締めは別管理) | 紐の金具や結び目が生地に当たり跡がつくのを防止 |
| 丈の折り返し | 中羽織は2つ折り/長羽織は3つ折り | 基本は裾を持ち上げて2つ折り | 絵羽模様や刺繍の柄部分に折り目が交差しないよう調整 |
特に着物に慣れている人ほど、無意識に衿を内側に折り込んでしまいがちです。羽織は衿を外側に折ることで、着用時に胸元の折り返し(衿返り)が美しく立ち上がるように仕立てられています。
【種類・シチュエーション別】男羽織・長羽織・外出先でのたたみ方
羽織の種類や着用シーンによって、最適なたたみ方は変化します。それぞれの特性を押さえておくことで、外出先や格式の高い場でも焦らずに対応できます。
1. 男羽織・絵羽羽織の扱い方
男性用の羽織(男羽織)は、女性用に比べて身丈が短めでマチが細い傾向にありますが、基本の手順は共通です。ただし、男羽織には背中や裏地に豪華な柄(額裏・絵羽)が配されていることが多く、裏地の刺繍や染色部分に強い折り圧がかからないよう配慮する必要があります。
また、女性用の「絵羽羽織(えばはおり)」も同様に、背中から裾・袖にかけて一枚の絵のように柄がつながっています。大切な柄の中央に折り目がこないよう、丈を折る位置を数センチ上下にずらすのが美しく保つ秘訣です。
2. トレンドの「長羽織」をシワなく収めるコツ
近年人気の膝下まで丈がある「長羽織」は、通常の2つ折りではたとう紙の縦幅(標準約64〜87cm)に収まりません。無理に押し込むと両端が折れ曲がってしまうため、裾を3つ折り(三つ折り)にするのが正解です。この際、腰まわりの帯と接する位置に折り目を重ねず、裾側から均等に三等分するよう折り返します。
3. 外出先や脱衣所での「袖だたみ(簡単だたみ)」
飲食店や観劇、お茶席などで一時的に羽織を脱ぐ場合は、平らに広げるスペースがありません。その際は「袖だたみ」を活用します。
背中心を半分に折り、左右の袖を重ねて身頃の上へ折りたたむだけで、わずか10秒程度でコンパクトにまとまります。膝の上に置くか、クロークに預ける際もシワになりにくく便利です。
4. 道中着・道行コートとの違い
羽織と似たアウターに「道中着(どうちゅうぎ)」や「道行(みちゆき)コート」があります。道行は衿が四角く開いており、前身頃をボタンで留める構造のため、着物と同様に衿を内側に収めてたたみます。一方、道中着は着物のように前を打ち合わせて紐で結ぶため、衽を重ねてたたむなど、それぞれ衿の処理が異なります。

【実態検証】羽織紐の結び跡とシワトラブルを防ぐ現場の知恵
悉皆(着物のクリーニング・補修)の現場調査や知恵袋・SNSの投稿を分析すると、羽織のトラブルで最も多いのが「羽織紐の金具や結び目による生地の凹み・色移り」と「長期間放置による衿元の変形」です。
特に「直付け(じかづけ)」タイプの羽織紐は取り外しができないため、そのまま身頃と一緒にたたんでしまい、上に重なった着物の重みで生地にクレーター状の圧迫痕が残るケースが頻発しています。
・S管(金具)付きの羽織紐:たたむ前に必ず取り外し、小物袋で別管理する。
・取り外せない羽織紐:紐を結び直して平らに整え、羽織紐と身頃の間に「和紙や半紙」を1枚挟む。これだけで圧力による生地の傷みや色移りを100%防げます。
羽織のたとう紙収納とお手入れ・防虫対策
美しくたたんだ羽織も、その後の保管環境が悪ければカビや虫食いの被害に遭ってしまいます。絹(正絹)は湿気を吸いやすく、タンパク質を好む害虫の大好物です。
着用後はすぐにタンスへしまわず、着物ハンガーにかけて2〜3時間陰干しし、体温と湿気を飛ばします。その後、ホコリを和装ブラシで軽く払い落としてから本だたみを行いましょう。
たとう紙に収納する際は、1枚のたとう紙に羽織1着を納めるのが基本です。タンスに重ねて収納する場合も、最も重い着物を下に、軽い羽織や帯を上段に配置することで、下敷きによるシワを防ぐことができます。防虫剤は生地に直接触れないよう四隅に置き、異なる種類の防虫剤(例:ナフタレンとピレスロイド系)を混ぜて使わないよう注意してください(化学反応でシミの原因になります)。
【プロの結論】自分でたたむべき人とプロのメンテナンスに頼るべき判断基準
日常的な着用後のたたみや陰干しは自分で行うのが基本ですが、以下のような状態が見られる場合は、無理にアイロンをかけたり畳み直したりせず、専門店への相談をおすすめします。
【セルフケアで十分なケース】
・折り目通りにきれいにたためており、一時的な着用ジワ程度である
・陰干しで汗の湿気がしっかり抜けている
【プロ(悉皆屋・専門店)に任せるべきケース】
・頑固な油ジミ、雨染み、汗ジミ(黄変)がある
・長年の保管で変な折りジワ(強い二重線)が固定化している
・金箔や立体的な刺繍が施されたアンティーク羽織で、生地が弱っている

【羽織 たたみ 方】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:羽織の紐は毎回ほどいてからたたむ必要がありますか?
A1:S管(金具)で引っ掛けるタイプは外して保管するのがベストです。直接結ぶタイプの場合は、ほどいて房を揃えるか、平らに結んだ状態にして半紙を挟み、生地への食い込みを防いでください。
Q2:長羽織がたとう紙に入りきらないときはどうすればいいですか?
A2:無理に端を押し込まず、丈を三つ折りにしてください。裾側を1/3折り上げ、さらに身頃の中央に向けてもう1/3折り返すことで、一般的な着物用たとう紙にすっきり収まります。
Q3:羽織にシワがついてしまった場合、自宅でアイロンをかけても大丈夫ですか?
A3:正絹(シルク)の場合は必ず中温以下に設定し、木綿の当て布をしてスチームなしで裏側から軽く浮かすようにかけます。金銀糸や刺繍部分、衿の折り返し部分に直接アイロンを強く押し当てるとテカリや変色の原因になるため避けてください。
まとめ:正しい羽織のたたみ方で和装を長く美しく
羽織のたたみ方は、「衿を外側に半分折る」「マチを内側に入れる」という2つの核心さえ押さえれば、着物よりも手軽に美しく整えることができます。
シワのない羽織は、羽織った瞬間のシルエットの美しさと着姿の品格を大きく引き立てます。帰宅後のわずか数分の丁寧なケアと正しいたたみ方を習慣化し、大切なお気に入りの羽織を末永く楽しんでください。 (出典: 羽織 たたみ 方(Yahoo!ニュース))